毎年、全国で介護関連の展示会がたくさん開催されます。例えば、毎年10月に実施される「国際福祉機器展(HCR)」もその1つかもしれません。例年、たくさんの製品、システム、プログラムが展示されます。

 

こうした展示会に継続して参加すると、気づくことがあります。それは、新しく出展した企業が、翌年には消えてしまっていることが、少なくないということです。そもそも、私たちの目から見ても「どうしてこんな開発をしたんだ?」と疑問に思うようなものも多数あるのが現実です。

 

つまり、毎年、介護業界には、異業種メーカーやシステム会社、各種サービス関連企業が次々と参入しますが、それと同じくらい撤退する企業があるのです。厳しいですね。

 

しかし、高齢化のピークはまだまだ先です。今後、ますますマーケットは拡大していきます。何とかうまく参入して、この拡大する市場を獲得したいところです。 

 

こうした「失敗企業」の多くは、次のような「落とし穴」に陥っているように思います。

 

1.プロダクトアウト型開発

商品開発は「プロダクトアウト(製造思考)」ではなく、「マーケットイン(顧客思考)」で進めるべきということは、誰でも知っていることです。各メーカーの開発担当者も、そのあたりのことは、十分にご存知なはずですし、既存事業においては、そのような失敗はしないはずです。

 

しかし、業界についての充分な知識を持たずに、少ない知識、一面的な視点からだけで開発を進めるから、介護施設や、要介護の高齢者に合わない商品になってしまうのです。

 

良い(売れる)商品をつくるためには、できるだけ多くの業界関係者から「声」を集めるべきです。

 

2.「商品化ありき」になってしまっている

大手メーカーでよくあるのですが、経営幹部から「次の目玉は介護業界だ」という指示を受け「予算」、「期限」だけが決まっていて、明確な「コンセプト」、「用途」、を持たずに開発が進んでいくパターンです。

 

メーカー担当者様とお話しすると、「とにかく3月までに予算を使いきらなくてはならないので」とか、「夏にはリースしなくてはならないから」といった理由から、グループインタビューで出た重要な課題を解決せずに、市場に投入してしまうケースがあります。

 

これでは“売れる製品”など、できるはずがありません。

 

事情はわかりますが、それならそれで、課題解決できるだけのしっかりした計画を、企画・調査段階から持つべきです。

 

3.「現場の声」に振り回される

「1.プロダクトアウト型開発」と矛盾する話ですが、現場の声をすべて反映すればよいというものでもありません。例えば、介護現場で働く方々の多くは「介護ロボット」の活用に抵抗感を持っています。

 

「介護は人の手でやるもの」「ロボットやサポート機器を使っては、血の通ったケアはできない」と考える方が多いのです。

 

しかし、インタビュー段階では「こんなの使いたくない」といった声が多かったにも関わらず、試作品を現場で試してみると「こんなものが欲しかった」と、急に真逆の意見に変わることがあります。ですから、現場の意見を聞く際に、その意見を取り入れるべきかの判断が必要となってきます。これは、異業種の方には厳しいかもしれません。

 

プロダクトアウトとマーケットインの考え方を、バランス良く取り入れるのが、理想的な開発方法です。

 

4.「積み上げ式」の価格設定

介護業界の収益性が低いのは、周知のことです。にもかかわらず「開発にこれだけかかったんだから」、「原価がこれだけかかるんだから」と”積み上げ式”でプライシングして、相場と合わず、まったく売れなかったという例もあります。

 

マーケティングの見地からいえば、価格設定は常に「逆算式」でなくてはなりません。まずは普及できる価格を設定し、その価格をターゲットにして開発を進めるのです。その際、機能を落として低価格化を実現することもあります。大事なポイントです。

 

5.売り方がイメージできていない

BtoB商材に関しては、当たり前ですが、業界によって商習慣が違います。にもかかわらず、既存事業の商習慣を持ち込んで「これは、こういうものだから」と、販売を考えるのですが、それが介護事業者にマッチせず、売れないというパターンです。最初から、どういうチャネルから流すのか、想定しておくべきです。

上記を整理すると、以下のようになります。「落とし穴」に落ちて、大きな損失を出さないためにも、是非意識していただきたいと思います。

要は「落とし穴」の逆をすれば良いのです。

 

1.マーケットイン型開発

「マーケットイン(顧客思考)」にするということですが、この時に意識しなくてはならない「顧客」は2つあります。まず一つは、言うまでもなく「お年寄り」などの、介護を受ける対象者です。そしてもう1つは、介護を提供する事業者、介護職です。

 

当然そこは、 BtoB商品(つまり事業者や介護職が使うもの)か、BtoC商品(お年寄り自身が使うものか)という視点が必要ではありますが、どんな場合においても、2つの視点が必要と言えます。

 

まず、お年寄りのニーズに寄り添う。これは当然のことです。この人たちに受け入れられないものをつくっても、意味がありません。

しかし、それは実は、一つの側面でしかありません。介護を受けるお年寄りは、自分のニーズを明確に伝えられる人たちばかりではありません。そうした人たち「アンケート」をいくら重ねても、商品化した際に、活用される(売れる)ものに近づくことができないケースが多々あります。

 

そこで、2つ目に「事業者」や「介護職」の意見も重要となります。これに関しては、なるべくたくさんのタイプの(価値観の)事業者や介護職から、意見を聞くべきでしょう。

 

弊社でお手伝いした例で言うと、ある介護職の体の動きをサポートする機器では、合計で10以上の介護事業者に協力をあおぎ、合計1000人以上の方々の意見を聞きました。結果は、バラバラです。福祉の業界は、考え方が180度違うケースもあるので、ボリュームゾーンとなるニーズを獲得するには、多くの方に意見を求めるのが近道。よく、1つの法人とがっぷり四つで開発を進める企業がありますが、私どもはオススメはしていません。

 

2.スケジュール変更もいとわない

 大手企業様に多いのですが、予算ありき、期限ありきで開発を進めるケースがあります。事情はよくわかるのですが、現場サイドでは「これはこのままでは難しそうだけど、来期になると予算もおりないから、進めてしまおう」という判断も出てきます。

 

それで、中途半端なものをつくり、展示会に大金をかけて出展し、評価されずに世の中から消えていく。

 

そんなことにならないように、リスケジュールや、大幅な戦略変更はあるものと最初から覚悟して、開発を進めましょう。なぜなら、成功する業者の方が少ないのですから。

 

3.現場の声を疑う

 前述と矛盾しますが、介護業界は、保守的な方が多い業界でもあります。「変わる」ということに、前向きな方ばかりではないのです。ですから、介護職などから発せられた言葉だけを頼りにすると、本質的なところを見失う可能性もあります。

 

「この人は、本心でこう言っているのかな?」

というところを、しっかりと見定める必要があります。そういう意味で、弊社のような介護現場をよく知るプロのサポートを受けるのもよいでしょう。

 

4.逆算式の価格設定

 あるメーカーは、先に「こういう商品があった場合、いくらまでならお金を出せますか?」というリサーチをしました。それによって、当初考えていたプライスと大幅に違うことがわかり、もともとの計画にあったスペックを大きく落として開発を進めることになりました。

 

 このように「これだけ開発にかかったんだから、これくらい欲しい」という視点ではなく、あくまで顧客視点(お金を出す人視点)で、プライスを逆算で考える必要があります。

 もちろん今後、介護ロボット等には、経産省などから大きな補助金がつくかもしれません。しかしそれは、長期にわたって約束されるものではありません。あくまで、直接販売した場合に売れるかどうかという視点で、プライスを前もって決定しましょう。

 

5.売り方をはじめから想定する

 「売るのは代理店の仕事。開発が私たちの仕事」では、うまくいきません。代理店を募るのであれば、それはどういうプレイヤーであるべきか。彼らがどうすれば、拡販ができるかということを、前もって考えて開発を進めるべきです。